はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は、雨水汐先生の「欠けた月とドーナッツ」4巻です。この巻が最終巻になります。
表紙の時点で何となく察すると思いますが、ひな子とあさひがついに思いを伝えて、同じ気持ちになることができています。
この表紙の時点でかなり尊いです。しかもペアルック。最高すぎる。
自分の気持ちに気づいた後のあさひは、いつも通りを装いながらも、ずっとひな子のことを気にしていました。
いままで思ったことのない感情だったことから、どう扱えばいいのか分からなくなっているような感じました。
そんな中ひな子の言動で一喜一憂する姿は間違いなく「恋する乙女」でした。
ひな子はしばらく敬遠していた母親が家に来ることになり、憂鬱になりながらもあさひといることで励まされていました。
ひな子と母親が和解するところは、ひな子の成長と母親に対する愛情が感じられてとても良かったです。
そして最後の告白。
特別な場面や出来事の後ではなく、その時言いたいと思ったから言ったというのがこの2人の関係らしいと感じました。
事件やトラブルがあるわけでもなく、心穏やかに、見守るように読むことができたこの作品は本当に良かったです。
(多少あったような気もしますが)
作品名 | 欠けた月とドーナッツ |
作者 | 雨水汐 |
発売日 | 2022年7月15日 |
定価 | 937円 |
発行 | 株式会社一迅社(百合姫コミックス) |
あらすじ
高校からの友達だった風香から告白され、デートしたあさひ。
しかし、風香からの告白を受け止められず、振ってしまう。
風香を傷つけてしまったと落ち込む帰り道、「会いたい」とあさひが思い浮かべたのはひな子だった。
一方のひな子はあさひや風香を通して自分の「好き」の形を見つける。
しかしその気持ちはまだあさひには伝えられず…。
両片想いとなった2人、その気持ちの行方は…。
「ふつう」に憧れた女性が恋を知る物語、ここに完結。
感想(ネタバレあり)
あさひが一緒にいたい人
風香とのデートの帰り道、自分にとって楽しい時、つらいときに「会いたい人」がひな子とわかったあさひ。
それからのあさひのひな子への態度というか、行動がわかりやすく意識していて積極的にひな子と一緒にいたいということを感じました。
自分から『一緒に帰りませんか』と声をかけたり、母親と喧嘩して電話してきたひな子に対して『うちに来ますか』と誘ったりしています。
一方で、ひな子に好きな人がいるとわかったときに戸惑ったり、うまく励ますことができずに落ち込んだりもしています。
ひな子の母親が泊まりに来ると聞いたときに、つい『また泊まりに行ってもいいか』と言ってしまったときのあさひの驚いた表情が印象に残りました。
本当に無意識に出てしまったんだなと感じましたし、それだけひな子と一緒にいたいんだということなんだと思いました。
ひな子に対して意識し始めて、ひな子の行動に一喜一憂しているあさひは「ふつう」の女性のような恋する乙女でした。
本人としては、「恋したい」ではないから、恋愛感情とかそういうものじゃないと思っていました。
傍目から見ると恋にしか見えないと思うんですが…
ラジオで聞いた本を買った理由も「内容がひな子に似ていたから」とのこと。
ずっとその人のことを意識するのは、好きということで間違いないと思うんですけどね。
こういう「普通と違う」みたいな悩み方はひな子と似ているなと感じました。
2人とも自分と違うところに惹かれたように感じているようで、本質的には似ていたのかなと個人的には思いました。
お互い思い合っている中でも、方向性が同じということを確認したり、悩みがあったら2人で対応を考えようというのはあさひらしいとも思いました。
母親との和解と告白
「恋」を自覚してから、精神的に強くなった(ように感じる)ひな子。
いままで嫌いだった自分のことを前よりも好きなることができています。
そんなひな子は人を好きになることを『ドーナッツ』と表現しています。
『まんなかに穴が空いているけど』
『いいじゃん悪くないよねって』
『これがないと私じゃないんだって』
『そう思わせてくれるんです 「好き」になるって』
『欠けた月とドーナッツ 4』より引用
最初ドーナッツと言ったときは「どういうこと?」とあさひ同様混乱しましたが、上のセリフを聞いてなんとなくわかってきました。
自分が人間として欠けていたとしても、それも含めて肯定することができる。
そんな自分だからこそ足りないところを埋めてくれる人に惹かれる。
それがひな子の感じた『好きになる』ということなんだと思います。(解釈間違えていたらごめんなさい)
それで強くなったひな子は母親に今まで言えなかった自分の本音を告白します。
あさひのことを悪く言われたような気がしたというのもありますが、あまり自分の主張をしていなかったひな子が母親に向かって自分の気持ちはっきり言ったのは驚きました。
それだけ、あさひのことが好きということですし、自分だけでなくあさひまで巻き込まれるのは嫌だったんだろうなと感じました。
個人的には、その言葉をメイクという鎧無しで言ったということにも強くなったと感じました。
そして、あさひに思いを伝えるひな子はそれまで抱えていた思いが溢れてきたような感じで本当に良かったです。
伝えることが怖くても、ずっと一緒にいたいという気持ちをはっきりと口にできたのはそれこそあさひからもらった強さなんだと思います。
無事に思いが通じて恋人になることができた2人。
この2人がこれからも幸せでいるように祈るばかりです。
おわりに
ということで「欠けた月とドーナッツ」4巻の感想でした。
ちゃんと幸せになって良かった…。
個人的に良かったポイントは
- ひな子の服をつまむあさひ(16話)
- ひな子の家に泊まりたいあさひ(17話)
- 溢れ出した『好きです』(20話)
です。
上2つは完全に意識したあさひの行動です。
小さく服の端をつまむあさひとか、泊まりたいってポロっていって顔が赤くなるあさひとか最初の頃をみたらそんなの想像できません。
そのギャップが可愛かったです。
最後の『好きです』言わずもがなです。ひな子の思いが詰まった一言で最高でした。
百合作品としては、キスとかそういう接触がないというのは個人的に珍しいものかと思っています。
そんな中でも、丁寧な心の描写や人間模様が描かれていてとても良かったです。
また、「好きになること」「自分のことが嫌いな人」にとっても前向きになれる作品になっていたと思います。
私自身自分のことが好きではなかったですが、この作品を読んで少しは前向きになれたかと思っています。
同作者の別作品『女ともだちと結婚してみた。』は現在連載中なので、先生の作品を好きになった方はぜひ読んでみてください。
今作よりはテンション高めですが、こっちも色々と考えさせられる作品です。
あとがき
百合作品といっても、いろんな形があるなと色んな作品を読んで書いて思っているこの頃です。
その中は当然好みや苦手が出てきますが、新しい作品に出会うのは面白いです。
これからも色んな作品を探していきたいと思います。
ということで、今巻のイラストですが、18話の表紙です。
子供のひな子と大人のひな子が手を繋いでいます。
子供のときのひな子可愛いです。ただ、母親にも言われていたように自己主張は少なそうだなと思いました。
良く言えば素直、悪く言えば無関心。そんな漢字なので母親が心配するのも無理ないかと思います。
大人のひな子も、イラスト上はパッと見の印象は変わらないように感じます。
成長していても本質は変わっていないということでしょうかね。
そんな2人が手を繋いでいるというところが個人的にとても好きでした。
1巻を読んで、かなり心に来た作品だったので、いろんな方に読んでもらいたいと思った作品でした。
それではまた次の作品で。
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