はじめに
百合好きの人ってなかなか見かけませんよね。あまり大っぴらに言えるものではないというのもありますが、なかなか感想を語り合える人は少ないです。
(私自身そういった交流が苦手というのもありますが)
もっと自分の好きなことを語っていきたいですね。
こんにちは、トビです。
今回は苗川采先生の「私を喰べたい、ひとでなし」6巻の感想です。
2~5巻の感想がないのはおいておきます。なぜなら直近で発売された6巻の内容が重くてかなり面白かったからです。あと5巻の在庫がありません。なんでやねん。
ということで私が早く感想伝えたい願望から紹介させていただきます。
内容はかなりシリアスです。救われる話が少ないです。
シリアスな漫画が好きな人にとって刺さる話だと思います。
作品名 | 私を喰べたい、ひとでなし 6 |
著者 | 苗川 采 |
発売日 | 2023年3月26日 |
定価 | 737円(税込) |
出版元 | 電撃マオウ |
今回のポイント
- 汐莉の過去
- 妖怪から人に寄り添うこと
- 比名子の思い
あらすじ
これは貴女の幸せを願った、歪な愛の呪い。
あらゆるものから隔絶された存在である、人魚の汐莉。
『私を喰べたい、ひとでなし 6』あらすじより引用
何者とも分かり合えない虚無感に苛まれる彼女を、唯一受け入れてくれたのが幼き日の比名子だった。
生きる希望に満ちた彼女の輝きを失わないため、祈りを込め、汐莉はその血を分け与えた。
それが比名子の、絶望そのものになるとも知らずに。
感想
汐莉の過去
5巻では汐里が美胡に人間と関わっていたことを話してから終わっていました。
汐莉がとある入江に一時的に住み着いていた時、定期的に子供が投げ込まれていました。
そんな中、同じようにある子供が投げ込まれましたが、「あまりにも不味そう」という理由でその子供を喰べませんでした。
その子供とともに暮らして(居着かれて)いましたが、住み着くには不便になったことからその入江から離れることにします。
当然、子供は海には連れていけないためおいていこうとします。しかし、別れの際に汐莉はその子供にあるお土産を渡します。
それは、『汐莉の肉=人魚の肉』でした。
汐莉の中ではお礼のつもりでした。しかし、向けられたのは「殺してやる」という恨みでした。
美胡も言っていますが望んでいない不老不死というのは辛いものだと思います。
死ぬこともできず、化け物として恨まれる。その子供に取っては「呪い」となったのだと思います。
その後、その子供は汐莉を殺そうと彼女を追いかけます。そしてとある大きな戦争が終わった頃(おそらく第2次世界対戦)、爆弾を抱えた彼女の自爆特攻により、汐莉は再生するのに長い時間を要するほどのダメージを負います。
この時の子供の表情はなんだか笑顔に見えました。彼女の中ではようやく復讐を終えることができたと思ったのでしょう。
大きな傷を負った汐莉はそのまま何十年と海を彷徨い続けました。
その時彼女が感じたのは自分は「世界の外側にいる」ということでした。
生まれた時から一人であり、誰とも何とも関わることができない彼女は誰ともつながることができない。そのように感じていました。
人間と関わり、拒絶されたことから「人間とわかり会えない」と考えたんだと思います。ただ、その時の表情をみると心の底では寂しかったのかと感じました。(汐莉が自分でその事に気づいているかは別として)
そんなある日、汐莉を「内側」に招いたのが幼い比名子でした。
比名子にかけた祈り(呪い)
比名子は汐莉に近づき、「大丈夫?」と声をかけます。
人魚状態の汐莉は子供から見ても不気味や恐ろしい存在に見えると思います。
でも比名子は汐莉が傷ついていることを心配し、栄養をつけて早く元気になってもらおうと弁当を汐莉に出します。
汐莉は体がうまく動かせない状態でしたが、近づいてきた比名子を喰べる程度のことはできました。ですが、比名子を食べることができませんでした。
そこから比名子と汐莉の短い交流が始まります。比名子は親の目を盗んではお菓子などを持っていきます。汐莉はそれを食べていったことにより体が回復していきました。
このときの比名子は現在の比名子と違ってかなり明るいです。常にニコニコしています。可愛い。でも若干頭悪い子に見える(明日の明日の次とか)。可愛い。
自分の姿を怖がることなく笑顔で一緒にいてくれる比名子に汐莉は「喰べたい」という気持ちを持ちながら、それをしてしまったら失ってしまうということを初めて知ります。
汐莉はこれまで何かを失うことが怖いや何かに執着するということ知らなかったのだろうと思います。その中で出会った「比名子」という存在を心から失いたくないものと思ったんだと思います。
そして別れ際、比名子に自分の血を分け与えます。
自分の血が入った人間は喰えたものではないと第4巻にて話がありました。
汐莉は比名子を喰べることよりも自分にとっての輝きを失わないために、健やかに生きてもらうために自分の血を分け与えたました。
その願いは自分本位の、ある意味以前の子供にしたことと同じような行動です。
それでも、肉そのものではなくただ健やかに生きてもらうためということで少しの血だけを飲ませたことは、自分が世界の内側に入れないから自分の目が届かない場所にいても元気育ってほしいという心からの祈りがこもっていたんだと思います。
その後偶然起こった事故により、汐莉の祈りが比名子にとっての呪いになってしまったと考えると本当に誰も救われませんね…。
成長した比名子との再開
比名子と別れたあと汐莉は二度と会うつもりはありませんでした。
しかし、ある化け物(虫?)が持っていたものに比名子の匂いがついていました。それは以前と大きく異なっていました。
比名子が変わった理由を知るため、汐莉は比名子のもとに向かうことにしました。
そこから第1巻につながっていきます。
そこで出会った比名子は以前となにもかも違っていました。
以前の幼い比名子は明るい子だったのでそれが真逆のような性格になってしまっているのでそれは驚くと思います。
比名子の身に起こった事故のことを知り、汐莉は比名子が自分だけは生き残れて良かったと考えていました。このときの汐莉は「私の血が君を救ったのだから」と考えています。
ずっと一人で生きていた汐莉にとっては自分が生き残ること=嬉しいことと考えていたんだと思います。ここでも優しさの押しつけがましさというか自分本位の考え方が出てきています。このあたりはどこまでいっても「ひとでなし」ですね。
そんな汐莉ですが、「一秒でも長くただ存在し続けてくれるだけでよかった」というセリフからも読み取れるように比名子のことを本当に大事に思っているということがわかります。
そんな中での美胡の「お前はちゃんと対話すべき」や「寄り添える努力をしろ」というのは本当に的確なアドバイスだと思います。
ここまで汐莉は比名子に思いや考えを告げづそれまでの価値観で行動してきていました。本当に相手のことを考えるのなら、相手が何を望んでいるのかを汲み取ることが必要ということを伝えたかったんだと思います。
これは私達にも響く考え方です。何にせよ相手を思って行動するというのは人と関わることが不可欠な現代では大切な考え方だと思いました。
美胡の思いと比名子の思い
比名子は汐莉に喰べてもらうという希望をなくしたことから閉じこもってしまいます。
学校を休んだ比名子を美胡がお見舞いに行きます。このときの美胡と汐莉の会話は明るくて心が和らぎます。この二人の会話でちょうどいい笑いが出るので重すぎず読むことができて…ないですね。重いです。
ただ美胡がコミカルな行動をしているのでただただ辛いだけでなく面白く読むことができます。比名子を呼び出すために叫びだすの面白すぎる。
その後の比名子の私ひとりだけ助かって嬉しかった?」というあまりにも答えづらい問いかけに美胡は『悲しかったけど嬉しかった』(『私を喰べたい、ひとでなし』6巻より引用)と答えています。もうほんとに言えたじゃねぇか状態です。
それでも比名子の心は沈んだままです。ごめんなさいのあとの『家族と一緒に死にたかったよ…』(『私を喰べたい、ひとでなし』6巻より引用)というセリフはあまりにも辛すぎます。
いままで自ら口に出したらいけない、その一線だけは超えてはいけないと考えていたのに、最後に聞こえた声も、希望を感じた願いも全て嘘だったことから比名子の心は限界になってしまったことが感じられました。辛すぎませんかね…
対話がはじまる
また明日と別れる比名子と美胡。
別れ際の比名子の笑顔がそのまま消えてしまいそうでもう逆に怖いです。美胡もそのあたりの気配をなんとなく感じていましたね。
次の日、比名子は学校へと向かいます。このときの「行ってきます」は正直学校に「行く」と家族の元に「逝く」のどちらの意味にも聞き取れて読んでるこっちもハラハラします。
学校に向かう途中、海で死んだ人間の手が見えます。(手のことは4巻にて説明されています)それはまるで比名子を呼んでいるかのよう。その手に引かれて比名子は海へと駆け出します。
「信じていた言葉も 守っていた約束も 何もかも初めからありはしなかった」という比名子のセリフからどれだけ絶望を感じていたかが感じられます。
比名子にとってはそれまでの希望がすべて偽物に感じたことから、その絶望は計り知れません。どこかの漫画とかでも同じようなこと言っていたような気がします。
そんな比名子を止めたのは汐莉でした。口調は怒っていますがその顔は泣いているかのようです。
そして汐莉は『君と話がしたい』(『私を喰べたい、ひとでなし』6巻より引用)といいます。比名子と対話をするために。美湖に言われたときは少し茶化しているように答えましたが、しっかりと受け止めているのだと思いました。
汐莉と比名子の対話が始まるというところでこの巻は終わります。
先が気になりますけどみるのが怖いです…。話が重い…。
この対話が比名子が前を向くきっかけになればいいのですが…。
終わりに
改めて、今回は「私を喰べたい、ひとでなし」6巻の感想でした。
ここまできて改めてタイトルの「喰べたい」を見ると1巻のときと比べると意味が180度変わっていて驚きます。
こめられた意味が重すぎる…。これが汐莉さんの愛ですか…。
少しずつ終わりに向かっているようにも感じますが良い方にも悪い方にも行きそうで、楽しみな半面耐えられるか心配です。初期案の世界に戻らないかな…
百合系の漫画でここまでシリアスに振っているものは少ないと思いますので、重い話が好きな人はハマると思います。
できれば語り会いたいですね。
それではまた次の作品で。
あとがき
重いシリアスな話は好きですが、ちょっと重すぎて情緒が乱される。
話と話の間の絵の可愛さで心が癒やされる。お祭りの時そんな思ってたんすか汐莉さん。心の声が面白い。
特にネームのアシカから本編のギャップが面白すぎる。そんなに変わりますか。
そして今回も皆さん顔がいい。個人的一番推しの場面は最後の「君と話がしたい」の前の汐莉と比名子の顔のアップです。雨に濡れているのも含めて美しすぎる。
これ以上はちょっと気持ち悪くなるかもしれないのでこれくらいにしておきます。
ちなみにこれを書いているときはニコニコ静画で4コマ漫画「わたたべ」が掲載されていました。本編とのギャップで風邪ひきそう
最初の4コマはあらすじとして完璧でしたね(本編の重さからは目をそらしつつ)
これ7巻で載せてくれませんかね。苗川先生お願いします。
相変わらず最後は言いたいこと言ってるだけなのでとっちらかってますね。すみません。
おそらくこのスタイルはしばらく続きます。
それでは、ありがとうございました。
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