はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は苗川采先生の「私を喰べたい、ひとでなし」3巻です。漫画ばかり優遇してすみません…。
ついに美胡が表紙に!そして比名子と2ショットです。今巻メインの貫禄を感じます。
ただ今巻からまた重さをました気がします。先に進むたびに重くなっている気がしますが比名子の闇が深すぎる…
おすすめポイント
- 美胡の比名子に対する思い
- 比名子の闇の深さ
作品名 | 私を喰べたい、ひとでなし |
作者 | 苗川采 |
発売日 | 2021年11月27日 |
定価 | 737円(税込) |
発行 | 電撃マオウ(電撃コミックスNEXT) |
あらすじ
「あなたがいたから、私はー…。」
幼少期に家族を亡くし、絶望の底にいた比名子。
そんな彼女を支え、救った親友・美胡の正体は「オキツネ様」と呼ばれる人喰いの妖怪だった。
正体を知ってなお、友人として手を差し出す比名子に突如美胡の鋭い爪牙が迫りー。
「そんなだから、悪い妖怪に付け入られるんだよ。」
(「私を喰べたい、ひとでなし」3巻あらすじより引用)
感想
比名子を守りたい美胡
比名子の親友の美胡の正体、それは「オキツネ様」と呼ばれる人喰いの狐でした。
昔、とある坊主に捕まって比名子の町の土地で人を助けるように強請られて以来、土地に根付いており、比名子の家の近くのお社に祀られていました。
比名子の家族はよく美胡の社にお参りに行っており、あの家族旅行の日も道中の安全祈願のためにお参りにいっていました。
その結果があの事故になったって思ったら美胡は浮かばれないですよね。汐莉の『ご利益も何もあったもんじゃないですね!』(『私を喰べたい、ひとでなし』3巻より引用)という皮肉が本当に辛い。
1Pで笑顔と曇った顔を同時に出すのは本当に心が痛くなります。比名子も美胡も救いがなさすぎる…。
そして、そんな比名子を見てきた美胡だからこそ、守れなかった願いのために比名子を守ろうとして、そりゃあ急に出てきた汐莉を警戒しますよね。
でもそれでもほとんどの妖怪が喰べたいと思う比名子の匂いには逆らえなくなっていくというのも辛い。守りたい人の近くにいると気分が悪くなる、喰べたいって思うのは精神的にきつすぎませんか。
そんな美胡に比名子は昔、それも比名子が生まれた時からしっていてずっとそばいてくれたことから、『それって友達って言ってもいいんじゃないかな』(『私を喰べたい、ひとでなし』3巻より引用)と言います。美胡比名尊い。
その比名子の言葉を聞き、美胡は自分の尻尾をちぎる決意をします。
狐としての妖力が溜め込まれている尻尾をちぎることは自らの力を失うこと。それでも比名子のそばにいることを美胡は選びました。
「オキツネ様」としてではなく「社美胡」として比名子のそばにいたいと思い、自らの力をなくす決意をした美胡。比名子への愛が大きさが伺えますね。
これでもあの事故以降に比名子個人に入れ込んだというのですから、そもそもよく来ていた家族の子供が変わり果てていく姿をみてのめり込んだか、実は最初から気にかかっていたか…。どちらも含まれていそうですね。
余談ですが、美胡の力って捕まえた坊主よりも強くなっていたのでしょうかね。捕まったときからあんなに強かったのか、町にいる間に強くなったのか。
個人的な見解としては後者かなと思います。自分の意思でこの土地の人たちを守っているといったことから、この土地に無理矢理縛られて言うというわけではなさそうなので、現在に至るまでに強くなったと思うのが自然かなと思いました。
話を戻して、比名子を守るためとは言え、自らの尻尾をちぎり、力が弱くなった美胡。
そこで、汐莉を利用して比名子を守ることを考えます。
お互いの利害の一致のため、なにより比名子のために比名子を「喰べたい」という汐莉を利用することを宣言します。本人に直接言うのすごいですね。
実際に戦ってみて、信用はできなくても比名子を守ってくれるという一点のみで汐莉を使う事を考えたのかと思います。
本当に利用できるものはなんでも利用しようとする美胡は強いですね。このときのシリアスな美胡の迫力に圧倒されます。
ギャグもシリアスもいける美胡、キャラとして使い勝手良すぎじゃないですかね。最高です。
比名子の思い
美胡の正体を知ってなお、美胡と友達でいることを選んだ比名子。
事故で家族を失ってからずっとそばにいてくれた美胡のことを本当に大切な友達だと思っていることが伝わってきます。
それ故に比名子の闇の深さが際立っているような気がします。
美胡と比名子が改めて友達になった記念にお菓子パーティーを学校でします。お菓子買い込み過ぎではないでしょうか。
そこで比名子は汐莉と美胡に仲良くなって欲しいといいます。
それは、自分がいなくなっても美胡が寂しくならないようにという思いからでした。
比名子は事故で家族を失って以来、家族のもとにいくことを考えていました。そんな中、美胡は比名子にとっての太陽でした。
そのため、比名子は自分がいなくなったとき、美胡が悲しむことが心残りでした。
しかし、美胡が妖怪であること、長年この土地に住んでいて本当の太陽のような存在だったことを知り、安心します。
それは自分がいなくなってもそれは美胡の中では一瞬で過ぎるであろう時間だと思ったからです。
だからこそ、自分がいなくなっても大丈夫だと比名子は思いました。
読んでて比名子の心の闇の深さを改めて思い知った気がします。美胡が妖怪だったことで逆に安心するって覚悟決まりすぎてもう怖いぐらいです。
そんなすぐに忘れるだろう人のために尻尾ちぎらないよ美胡は…。
美胡のことを友達という時、『沈みきれなかった』と表現しています。それは、美胡が本当に大事な友だちで、おいていくことに心残りを感じていたからです。
美胡が妖怪だとわかったことでここが「沈んでもいい」と思うようになったと思うのは皮肉ではないでしょうか。
途中幕間にて、比名子の心情が語られる話がありますが、その中で美胡が妖怪であることに『本当に安心した』(『私を喰べたい、ひとでなし』3巻より引用)といっているところは好きなシーンでもあり、辛いシーンでもあります。
このときの比名子の顔が本当に安心したって思うような笑顔なのがいいよねよくない。
比名子が幸せになれるルートはないんでしょうか…ある意味これが幸せになれるルートですね辛い。
汐莉と比名子の海水浴デート
さてここまで重い雰囲気が続いていましたが、ラストの海水浴デートも見どころです。(デートっていていませんがもうデートでしょ)
比名子の私服おしゃれすぎませんかね。可愛い。汐莉さんは初回の服と一緒でしょうかね。服とかに無頓着そうなのでそれだけかもしれません。
ただ、海水浴客をみて心が痛くなる比名子を見るのは辛いです。比名子に安寧の場所はないのか。助けて美胡、汐莉。
あと夏祭りのときも思いましたが、汐莉はだいぶ大食いキャラでしたね。1コマでしたがめちゃめちゃ買い込んでました。その後ソフトクリームも食べてましたね。スタイルを維持しているのは体いじれる体としても大食いですね。
美胡もたくさん食べているイメージがありますが妖怪ってとりあえず食べることが好きなんでしょうか。
もうずっとこんな場面でいいんじゃないでしょうかね。このときの汐莉さんもかっこよくていいですね。すぐにちゃらけたのは照れ隠しだと思いたいです。
終わりに
ということで「わたたべ」3巻の感想でした。
比名子の闇が深すぎて辛いです。皆で幸せになれるルートをください。
私の買った巻に帯がついているのですが、「それは、誰もが救われる彼女たちの選択」とあります。このままだと誰も救われないのですが…。
まあ、この暗さも含めて作品として好きなのですが。
みなさんもぜひこの重い世界に浸ってみてください。
それではまた次の作品で。
あとがき
今回もイラストが最高な場面が多いのですが、個人的に好きなのは、12話のタイトルが載っているページの比名子の寂しげな笑顔ですね。タイトルの「別つ海溝」も含めて最高です。
汐莉と美胡が仲良くなっていて嬉しいという笑顔のはずですがその裏の思いを知っていると素直に喜べないという気持ちもあります。君も生きて…。
あとおまけ漫画の紹介も面白いです。本編よりちょっと生きてる比名子とちょっと不穏な汐莉。比名子はもうちょっとだけ生きようよ。
暗い物語はいろいろ考えさせられることが多くて好きなのですが心が痛くなりますね。私のメンタルトレーニングにもなりそうです。
それではまた。
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