はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は、岬鷺宮先生著、いちかわはる先生画の「午後4時。透明、ときどき声優」1巻です。
久しぶりのライトノベルです。
ちなみに岬先生の他作品ですが、『三角の距離は限りないゼロ』(電撃文庫、Hiten先生画)があります。
こちら本当にオススメですのでぜひ読んでみてください(唐突な宣伝)
戻って本作の主人公は自分のことを地味な人間だと思っている女子高生『山田良菜』(良菜)。
そんな彼女が自分と同じ声を持つ超人気声優『香家佐紫苑』(紫苑)に入れ替わりを頼まれることからはじまります。
本編でも言われていますが、現実にあったら本当に炎上案件ですね。
良菜もそうですが、紫苑や他のキャラも「作品」や「キャラ」に本気で向き合っていることを感じました。
声優の仕事全部が作中のようではないとは思いますが、改めて、声優という仕事の凄さ、奥深さを感じました。
最初の理由はどうあれ、本気で仕事に向き合っている人は応援したくなります。
8月25日には2巻が発売されるので、続きがどうなるのか、すごく気になります。
作品名 | 午後4時。透明、ときどき声優 1 |
作者 | 岬鷺宮 |
イラスト | いちかわはる |
発行日 | 2023年6月25日 |
定価 | 726円(税込) |
発行 | 株式会社KADOKAWA(MF文庫J) |
あらすじ
自分には何もないと考えている女子高生の山田良菜。
彼女はとあるきっかけでちょっとした有名人になる。
それは今人気の声優『香家佐紫苑』と同じ声だったということ。
自分には関係ないことだと思っていた良菜ところに、なんと紫苑(のマネージャーの斉藤円)がやってくる。
そこで良菜に、代役になって欲しいとお願いされる。
その時はなんとかこなした良菜だったが、その後改めて紫苑と再開し、改めて入れ替わって欲しいとお願いされる。
紫苑の入れ替わりを通じて声優の仕事をすることになった良菜。
そこでの仕事や出会いを通して、少しずつ成長していく。
これは、入れ替わりから始まる青春お仕事ストーリー。
感想
紫苑になること
今作の大きな特徴は、主人公の良菜が2つの演技をすることにあると思いました。
超人気声優の『香家佐紫苑』になりきること。
紫苑として、声優としてキャラを演じること。
演技を求められる現場でさらに演技を求められるというのは、相当しんどいことなんじゃないかと思いました。
人間元々TPOやらなんやらで「いつもと違う自分」を演じるときというのはあると思います。
それでも演技の上に演技を重ねるというのは殆どないと思います。
しかも良菜がしている紫苑は自分とは正反対の性格のような人物。
そんな人の真似をしつつ、「紫苑がするような」演技をするというのの難しさは、私には想像できないです。
それを完璧ではないにしてもこなしつつ、しかもオーディションに勝ち残れている良菜。
本人が思っている以上に才能があったんだと思います。
話によっては、話がうまく行き過ぎていると思われるような流れです。
それでも違和感には気づかれていたり、そもそもバレたりとすべて完璧ではないというところで万能ではないというところが伝わってきます。
そのバレた相手というのが音響監督の『浜野二郎』(浜野さん)なあたり、妙なリアルさを感じました。
にしても最初のオーディションのあの失敗から立て直せたのは出来すぎ感も感じましたけどね。
面白かったからよかったですが。流石にあれは色んな意味で周りの人も心配しますよ。
「良菜」のやりたいお芝居
『香家佐紫苑』として声優業に励む良菜。
演技は初心者であるため、紫苑から直接教えてもらっていたり養成所に通ったりしています。
そんな中、良菜の演技に紫苑にはない特徴が見えだします。
声や姿が似ているといっても全く別の人間、演技の仕方が違うのも当たり前です。
そんな良菜の演技のことを紫苑が『無色透明』と表していました。
色がない。透き通っている。けれど、確かにそこに存在するお芝居。
『午後4時。透明、ときどき声優』1巻より引用
なにもないと思っていた良菜が紫苑の言葉にこのように思えたのは、褒められたというのもありますが、それがなにかにつながるかと思ったからだと思います。
この場面以降、『無色透明』を生かしたような演技が増えていったような気がしました。
ただ、それは求められている『香家佐紫苑』の演技ではないため、それを出さないようにしていました。
そんな中、とあるオーディションに受かるために、自分の演技をしたいと思いを声に出したときは良菜の成長や演技への本気度を感じました。
こうしたなにかに本気になれる人って個人的にすごく尊敬します。
それだけ目標に向かって努力を重ねることができるし、回り道に行ってもそれが全て成長につながっていけると思います。
こういう人のことはすごく応援したくなります。
おわりに
ということで「午後4時。透明、ときどき声優」1巻の紹介・感想でした。
声優という仕事を通して、ここまで感情を揺さぶられるのかと思いました。
このあたり、岬先生はすごいと改めて感じました。
私の個人的なオススメは、
- オーディションで緊張する良菜(第四話)
- 浜野さんに相談する良菜(第五話)
- 三棟さんとの対決(第七話)
の場面です。
緊張する良菜は上でも触れましたが、紫苑として演じようとして失敗した場面ですね。
香家佐紫苑としての演技、オーディションの緊張、初めての実践とここまで要素が揃ったらそりゃ緊張しますよね。
何とか乗り切っていましたが、いろいろとあせっていたことを感じました。
本人としては大真面目でシリアスな場面ですが、イラストの表情含めてかなり面白かったです。
浜野さんに相談したのは、日本最強の若手女性声優と呼ばれている『三棟珠』(三棟さん)と同じオーディションを受けることになったときにどうすれば勝てるかと言うことです。
この時すでに自分がどういう演技をするべきか悩んでいました。
そこで、自分の素性を知っている浜野さんに相談したところ帰ってきたのは、どうしようもないほどの現実でした。
普通に考えればそんなんでしょうけど、ここまではっきり言うものかと思い、印象に残っています。
それが良菜の成長にも繋がったのかと思いました。
三棟さんとの対決は、上の浜野さんとの相談と自分の決断を通してのものになります。
この時、良菜が演じている場面が書かれているのですが、良菜が演じている場面、そしてそのセリフの場面の両方とも感じることができました。
小説は文字だけの描写なので、あくまで私自身でその場面を想像しなければなりません。
それがはっきり想像できたというのは、それだけその場面に「思い」が込められているからだと思います。
それが本来感じて欲しい思いと完全に一致しているとは限りません。
それでもその世界を少しでも感じることができたので、とても印象に残りました。
なんだか終わりのほうが長くなりましたね。
そんなわけで本作、最初にも書いていますが2巻が出ます。
さらなる良菜の成長と紫苑や他の人との関係に注目していきたいです。
あとがき
良菜がネットでちょっとした有名人になったときの愛称の『技術室ちゃん』が地味に好きです。
ネット配信とかでその名前で活動したら最初はすごく盛り上がりそうだと思いました。
言葉にするとすごく噛みそうなのでそのあたりも含めて愛されそうだと思ってしまいます。
私が軽く考えすぎですかね。
さて今巻で私が特に好きなイラストは、カラーイラストの2枚目です。
第七話のオーディションの一幕になります。
自分の演技をしたいと思った良菜がその全力で演技している姿に心惹かれます。
その気迫感じるこのイラストがとても好きです。
あとは表紙ですが、本編を読んだ後だと良菜こんなテンションになっている時ありましたっけ?と思ってきます。
紫苑の演技をしているところなんでしょうかね…それとも素でやっているのか。
本人とのテンションの差を勝手に感じていました。
ついでに三棟さんですが、イラストが基本的に敵役にしか見えないんですよね。
本人はいたっておちゃめなんですけど格好が黒い服ですし…。
ただ本当にかわいい人なので2巻以降の活躍も期待したいです。
ちょっと最後ダラダラなりましたが、ここまでにしたいと思います。
それではまた次の作品で。
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