はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介するのはライトノベルです。林星悟著、餡こたく画の「ステラ・ステップ」1巻の紹介、感想です。略称は「ステステ」。
この本の推薦文を書いているのは「安達としまむら」作者の入間人間先生です。
…この時点で何となく察するべきでした。ただ、私はこういう色々と「重い」作品も好きなので買って良かったです。
おすすめポイント
- アイドル×戦争というダークな世界観
- 少しずつ感情が出てくるレイン
- 何度も来る驚きの事実
作品について
作品名 | ステラ・ステップ |
作者 | 林 星悟 |
イラスト | 餡こたく |
発行 | 2023年1月25日 |
定価 | 726円(税込) |
レーベル | MF文庫J |
あらすじ
少女たちが強いられたのは〈道具〉として、――ただ歌うこと。
突如飛来した隕石により地上は荒廃。人々は新しい国家を建て、闘争や略奪を繰り返していた。
国家間の戦争の手段として「暴力」と置き換えられたのが、少女たち「アイドル」だ。
砂漠で覆われた「砂の国」に、国民からは崇められ、少女たちからは恐れられているアイドルがいる。
技術を高めることだけに関心を持ち、感情はどこかに置いてきてしまったかのような少女・レイン。
最強を誇る彼女の無敗記録はずっと続くはずだった。
だが、感情豊かに歌う少女・ハナによってその記録は止められる。
このハナとの出会いは、レインの胸にこれまで知らなかった感情を芽生えさせ――。色のない世界で生まれた、少女たちの愛と絆の物語。
『ステラ・ステップ』 あらすじより引用)
感想
「アイドル」を用いた戦争
この作品において一番異質なのが「アイドル」の役割です。
私達がよく知るアイドルというのは、テレビやライブなどで見るような、歌って踊って、夢を与える人たちのことを想像するのではないでしょうか。
しかし、この作品におけるアイドルとはそれそのものが「戦争の道具」なのです。
「アイドル」という名の道具を用いて、『戦舞台』(ウォーステージ)と呼ばれる「ライブ」によってお互いの領土を奪い合う戦争をしているのがこの世界です。
血は流れず、武器を使用しない。しかし、アイドルである彼女たちは国の道具として身と心が削られていっています。勝つために道具を使い、壊れたらまた新しく、壊れない道具を使う。ある意味普通の戦争よりもひどいかもしれません。
国の道具であるアイドルはある意味で国のシンボルです。なんだか本来の意味の「偶像」(アイドル)のようにも聞こえて皮肉に感じます。
この「アイドル」に込められて意味も作中にて説明されるのですが、本当に「人の心がないのか」と思ってしまいます。設定が辛すぎる。
レインとハナの出会い
そんな中、主人公の「レイン」は「砂の国」の最強の兵器として無敗を誇っていました。
彼女の技術を高めること、『戦舞台』に勝つことのみにこだわる姿勢はまさに「戦うための人形」のようです。
それは姿勢だけの話ではありません。その時必要なこと以外は忘れ、『戦舞台』にかかわること以外に興味を持たず、ただ勝敗のみを見る。それがレインでした。
そんな中、レインは新人アイドルとリハーサル(戦舞台の予行演習)を行うことになります。
そこで出会うことになるのが、もう一人の主人公(だと解釈しています)の「ハナ」でした。
ハナはレインとは異なり、私達が知る「アイドル」のように感情を込めて歌っていました。
彼女と出会い、リハーサルをしてレインは彼女に興味を持ちます。それは、レインが忘れていた感情でした。
ハナと交流を深めていく中で、レインは人間らしい「感情」を取り戻していきます。
最初の方は必要最小限のことしか話さない、気にしないといった性格だったレインが感情豊かになっていくのは見ていて心揺さぶられました。(まあ、取り戻した理由が理由ですが)
感情が戻っても『絶対に誰にも負けない』や『勝つよ』といった言葉にはそれまでの経験もあるでしょうが、わりと自信家なところがあるなと感じました。
特にハナと話しているときは言葉の端々から楽しそうな感情が伝わってきてすごく癒やされます。
にしても、ハナにかける感情がだんだんと重くなってきているのは気のせいではないでしょうが。というか完全に途中から依存してきている気がします。それも見てて面白いのですが。
ハナも「姉のため」という目的もありますが、レインと一緒に歌えることをほんとに楽しんでいることが伝わってきていましたね。
個人的に一番好きなのは「日吉早幸」(早幸)との会話です。
最初はレインが周りに興味を持っていないことから、うまく意思疎通すら取れていないように感じていました。
しかし、レインに感情が戻りだしてから早幸と改めて友達になっていく流れは本当に良かったと思いました。
自虐気味のレインを諭す早幸の包容力が強すぎます。早幸さん本当に良い人です…。この2人の絡みももっとみたいです。
次々と明かされる真実
今巻では、物語の根幹となるような真実が一気に明かされます。1巻ですよね?というくらい情報量がめちゃくちゃ多いです。
「アイドル」の意味から『戦舞台』のことなど長編作品なら伏線として後々終盤で回収されそうなものまで一気に出てきて何度も驚かされました。
その情報がわかってから、最初からまた読み直すとセリフの意味が改めてわかったり、違う意味に聞こえてきて何度も楽しめました。まさか最初から伏線仕込みまくってるとか思わないじゃないですか…
キャラクター一人ひとりについて性格や言動がすべて物語に関する伏線となっていて、全てに意味があるってこういうことかと改めて感じました。
やっぱり、一番衝撃的だったのはラストですね。
さあ、物語も終わって次の巻への繋ぎかなって思ったところに飛んできたので完全に油断していました。あのページを開いたときの恐怖はある意味忘れられません。ここ数年ライトノベルを読んできた中では一番ドキってしました。
最後まで油断できないことを感じたので次巻も楽しみです。
最後に
ということで今回は「ステラ・ステップ」1巻の紹介でした。
あとがきでの作者曰く、ジャンルと断定はしないとのことです。それぞれ自分なり楽しみ方で楽しんでくださいとのことです。
私も「この作品のジャンルは?」と聞かれても即答できないくらい魅力がたくさんありました。
あえて人におすすめするなら
- ダークな世界観が好き
- 百合作品が好き
という人は特に気に入る作品ではないかと思います。
この記事を出してすぐの2023年4月25日に2巻が出るとのことなので次も早く読みたいですね。
それではまた次の作品で。
あとがき
イラストがいいですよね。表紙から素晴らしいです。
個人的に好きなのはレインと早幸の2人が書かれている挿絵ですね。顔面偏差値が高すぎる。あと尊い。早幸はもっと出てきてもいいんですよ。
個人的に気になるのは「砂の国」のブルーローズですね。名前は何回か出て少しだけセリフも出てきましたがイラストもなく絡みもほとんどなかったです。これから活躍してくれると嬉しいです。(なんだかんだ2回出てきて2回とも勝ってるの強い)
後、この世界の大人、闇が深すぎる…
今後ハナのお母さんが出るたびにビクつきそう(色々な意味で…)
感想の表現も下手に書くと意味合いが変わってくるので難しかったです。特に血は流れないのあたり。
ここまで世界間に引き込まれる作品も少ないので読んでよかったです。なんで出た時すぐかわなかったんでしょうか…
過ぎたことは仕方ないのでこの作品を応援していきます!
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