はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は、羽田宇佐先生著、U35先生画の「週に一度クラスメイトを買う話~ふたりの時間、言い訳の五千円」です。表紙の距離感が最高です。
主人公である『宮城志緒里』(宮城)と『仙台葉月』(仙台さん)の感情を読み取るのが難しいというのが最初に出てきた感想でした。
五千円でつながる、友達だととも言えないこの関係性を表すのにふさわしい言葉が私には思いつきません。
ただ流れで五千円でつながる関係になって、いつでもやめられるのに続けていく。
宮城がその場の思いつきで出しているような五千円で出す「命令」に対して、不快に思うこともありながら、命令を受ける仙台さん。
名前をつけられないような関係性を続けていく2人のことがなんとなく目を離せなくなる、そんな不思議な感情が湧いてくる物語に感じました。
ここからあのラストまでいくかと驚きました。
なんとなく意識しているのを感じましたが、1巻で行くとは思いませんでしたね。
ラストで関係性が変わっていくのか、まだこの不思議な関係が続いていくのか。
今まで読んだジャンルとは趣が異なっていましたが、すごく心に残る作品でした。
ちなみにこの作品、カクヨムのラブコメ部門特別賞とのことです。ラブコメ…ラブコメとは…。
作品名 | 週に一度一度クラスメイトを買う話~ふたりの時間、言い訳の五千円~ |
作者 | 羽田宇佐 |
イラスト | U35 |
発売日 | 2023年2月17日 |
定価 | 770円(税込) |
発行 | 株式会社KADOKAWA(ファンタジア文庫) |
あらすじ
彼女ーー宮城は変だ。週に一回五千円で、私に命令する権利を買う。一緒にゲームしたり、お菓子を食べさせたり、気分次第で危ない命令も時々。秘密を共有し始めてもう半年経つけれど、彼女は「私達は友達じゃない」なんて言う。
ねぇ宮城、これが友情でないのなら、私たちはどういう関係なの?
あの人ーー仙台さんでなければいけない理由は、今も別にない。私のふとした思いつきに彼女が乗った、ただそれだけ。だから私は、どんな命令も拒まない彼女を今日も試す。
……次の春、もし別のクラスになったとしても彼女はこの関係を続けてくれるだろうか。今は、それがちょっとだけ気がかりだ。
『週に一度、クラスメイトを買う話~ふたりの時間、言い訳の五千円~』あらすじより引用
感想
五千円で仙台さんに命令する宮城
たまたま、本屋で困っていた仙台さんを五千円で助けただけ。
そこからなんとなく始まった、週に一回(絶対ではない)五千円で仙台さんに命令する権利を買う宮城。
その命令の内容も足を舐めさせてたり、チョコを食べさせたり…まあ、普通は何させたいのかわかりませんよね。(本編より前は本を読ませたり、宿題させたりといったものだったらしいですが。)
そんな命令にも仙台さんは従います。五千円もらっているからか、それとも他の理由があるのか、宮城からはわかっていません。
宮城自身、特に2年生の時は自分の感情について、よくわかっていなかったんじゃないかと思います。
本編から命令の内容が変わっていったのも、自分の感情がよく分からなかった結果からなのかと思います。
そんな自分の感情に振り回されるのが嫌で、仙台さんを突き放し様な行動を何度もしているように見えます。特に顕著なのがサイダーをかけたことですね。(字面すごい)
その考えも仙台さんの押しの強さで失敗していますが…
なんだかんだ本編始まる前の間にある程度仲は深まっていたんじゃないかと思います。それが本編(ちょうど3年に進級する時期)で色々と考えた結果ああなっただけで。
…にしても突発的すぎる気がしますけどね。
宮城の行動の大きな理由はプロフィールにある『実は寂しがり屋』に集結しています。
友達ではないと思っている仙台さんを五千円で家に呼ぶのも、一緒に御飯を食べるのも、命令するのも、宮城に触りたくなるのも、根本は個々にあると思います。
たぶん、宮城は私を必要としている。
私も、この場所を提供してくれる宮城を必要としている。
『週に一度クラスメイトを買う話~ふたりの時間、言い訳の五千円』より引用
仙台さんの地の文で上記のようなことを言われているように、一緒にいてほしいと思っているんだと考えます。それが意識的か無意識下は別として。
ただ、宮城自身は友達と思っていないから、それをつなぐために五千円を払っていると思います。
何度も「自分と仙台さんは違う世界の人間」ととれるようなことを考えてることから沿う感じました。
にしてはこじらせ過ぎていませんかね…。仙台さんだからここまでついてきていますけど。
ここまで面倒臭いと逆愛着湧いてきます。むしろ可愛いと思ってきますね。面倒臭いことには代わりませんが。
今巻では色々こじれていましたけど、仙台さんのおかげで元サヤに収まった感じですね。もう本当に良かった。
というか、宮城最後まで本編ではほとんど笑っていなかったんじゃないかと思います。笑ったとしても意地悪というか若干邪悪の気配を感じる笑顔だった気がします。
次巻ではもう少し笑った顔が出て来ないかな…。
宮城の家に通い続ける仙台さん
一方、五千円で買われている仙台さん。
買われているというには好き勝手しているような気がしますが…。
命令されたことに従っていますがその後大体反抗するような、いたずらをするようなことをしていますし。
五千円が欲しいわけではない
私に命令して、いうことを聞かせていると信じている宮城をもうしばらく見ていたいだけだ。だから、高校生の間くらいは宮城のくだらない遊びに付き合ってあげようと思う。
『週に一度クラスメイトを買う話~ふたりの時間、言い訳の五千円』より引用
2年生の時点ではこんなふうに考えています。命令されてこの考えはメンタル強すぎますね。
いくら宮城の家が居心地が良くなっているからって、この状況エンジョイしすぎでしょ…。
そんな仙台さんの気持ちも、サイダーの一件にて少しずつ変わっていきます。
サイダーをかけられたときに宮城から借りた服を持って直接家に行きます。
このあたり、宮城視点だったのでどういう気持でいったのか見えてこないんですよね。おそらく最初の本屋と同じように借りを作りたくないといったものが合ったと思いますが。
今までのルールは宮城から呼び出すといったものでしたが、宮城が自分から離れようとしていることを察して自分から会いに行きます。行動力がすごい。
自分でも嫌な思いをしたという実感があるのに、服を返すいう要件で直接会いにいって元の関係に戻すって、本人はこの時点では単純に「友達」と思っているけどそれ以上の思いがある気がします。
個人的には話の流れ的に「宮城>仙台さん」ぐらいの感じで読んでいたんですけど、何度も見返しているうちに「宮城<<<仙台さん」ぐらいの感情があるんじゃないか思ってきました。
2回ぐらい突き放されたのに家でも学校でも押しかけてきて、命令するように誘導したりしていて、極めつけはキスをすることを宮城の口から言わせます。
元々、宮城から迫ってきていたことでもあり、宮城がそういう気持ちを持っていたというのはなんとなくわかっていましたが、それを仙台さんからいうとは思いませんでした。
最初から宮城が押されていたとはいえ、終始仙台さんのペースが強かったような気がします。
ラストの地の文もそうですが、仙台さん、宮城のこと好き過ぎではないでしょうか…
この辺の感情が次巻でどうなるのか楽しみです。
おわりに
「週に一度クラスメイトを買う話~ふたりの時間、言い訳の五千円」の紹介、感想でした。ちょっと湿度が上がってきましたかね。
個人的には週に一度ぐらいとはいえ、時間の流れが早いように感じました。
今巻だけで2年の梅雨時期から3年の進級、そして4月終わりまで流れています。
それだけ2人の時間は特別なものではなく進んでいったということでしょうかね。
2人ともお互いに対する感情が強すぎて読み始めた時は、感情乱されまくりでうまくついていけませんでした。
読み返していてようやくお互いの思いついてわかってきたような気がします。
…思春期の感情ってここまでこじれていましたかね。これが恋愛経験の差…。
さて、今巻の個人的推しポイントは
- 命令されて舐める仙台さん
- 仙台さんに触れたい宮城
- 家にも学校にも押しかける仙台さん
です。なんか変な性癖が開発されそう…
仙台さんの周りの環境だったり、それぞれの家庭環境だったり、色々と深堀出来る内容がたくさんありそうですね。
今巻は学校と宮城の家が中心だったので、もう少し行動範囲広がるでしょうか
次巻も楽しみです。
それではまた次の作品で。
あとがき
ここまでの友達関係って普通なれないと思うんですけどうでしょうかね。
女の子どうしだから可能なのか友達の枠を超えているからなのか…
理解できないところがあってもどかしいですね。
さて、今回特に好きだったイラストですが、第7話のイラストです。教科書を読んでいて寝てしまった仙台さんに対して手をのばす宮城です。
多分普段の仙台さんの前では見せないような、愛おしそうに思っている顔がすごく印象的です。
この時点で確実に普通の友達とは思っていないと思います。
ただおそらくこれ以上に仙台さんのほうが気持ち強めなんですよね…宮城が押されるのもわかってしまう。
だんだんとこの関係の深みにハマって言っているような気がします。
これからもこの関係性を見守っていきたいです。
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