はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は、Ru先生原作、宮原都先生漫画の「夏とレモンとオーバーレイ」です。
私がこの作品を知ったのはXで流れてきてたまたま読んだからですが、その1話だけで世界観に引き込まれました。
作品名を残し忘れていたのでそのまま流していましたが、先日たまたまアニメイトでみて「見たことがある」と即買いしました。
宮原先生については、『隣の席が好きな人だった 学生百合アンソロジー』にも参加されていて、作品を紹介しています。
こちらも内容から最高なので読んでみてください。
声優だがほとんど仕事がなく、配信での投げ銭とコンビニのバイトで生活してる『ゆにまる。』と大企業勤めのOL『紺野さやか』(紺野さん)。
そんな違う世界の2人が紺野からの「葬式で遺書を読んでほしい」という依頼によってつながる物語です。
ゆにまる。の気持ちも紺野さんの気持ちもわかったので、すごく心に染み込んできたように感じました。
語彙力がないせいでうまく言葉にできていませんが。
1巻完結なので手が出しやすく、内容もある意味だれの心にも秘めているようなことなので共感しやすいと思います。
9月最後に読んだ本として最高の締めとなりました。
ちなみに、個人的にこの本のカバーの手触りからとても良かったので、できれば紙で買って欲しいですね。
作品名 | 夏とレモンとオーバーレイ |
作者 | 原作:Ru 漫画:宮原都 |
発行日 | 2023年1月18日 |
定価 | 1,210円(税込) |
発行 | 株式会社一迅社(百合姫コミックス) |
あらすじ
本業の仕事はほぼゼロの声優、ゆにまる。
配信でのわずかな投げ銭とコンビニのバイトで生計を立てていた。
そんな中、大企業勤めのOL・紺野さやかから『私のお葬式で遺書を読み上げてほしい』という依頼を受ける。
ゆにまる。は依頼を訝しみながらも、報酬につられてその仕事を引き受ける。
2人は会議という名目のもと、紺野さんの要望でいろんなことをしていく。
遺影の撮影から遺書の書き方、花火、水族館…。
会議を通してゆにまる。は紺野さんに興味を持っていく。
住んでいる「世界」の違う2人が過ごした一夏の物語。
感想
異世界の住人の紺野さん
声優をしているゆにまる。は、本業の仕事がほとんどなく、配信の投げ銭によるわずかな収入とコンビニのバイトでギリギリ生活していました。
そんな自分にとって、フェイスブックやインスタを使って自分磨きをしているような普通を「異世界」と呼んでおり、自分とは関わりないものと思っていました。
このあたり、軽くSNSで差別しているような感じもしますが、なんとなく否定できないですね。
多分、この異世界には今ならティックトックも入るんだろうなと思います。
私も「異世界」という感覚は感じていたことだったのですごくスッと入ってきました。
そんな中、とある依頼が入ってきます。
大企業に努めている紺野さんから、『自分の葬式で遺書を読み上げて欲しい』というものでした。
初対面の際、ゆにまる。は紺野さんのことを「インスタ女子」と思っており、異世界の住人と思っていました。
そんな彼女から遺書を読んで欲しいという依頼が50万円という金額で来たということで、かなり混乱しています。
『頭の中はどうなってるんだ』
『…サイコ女の道楽でも』
『夏とレモンとオーバーレイ』より引用
異世界の住人と思っていた人からでるような言葉ではなかったので、だいぶ言葉が悪いです。
もし自分が言われたとしたらまあ、同じようなことを思ってしまうかなと思います。
それでも、今の生活が苦しいことから、仕事を受けることにしたゆにまる。
実際こういう仕事で50万円って妥当なんでしょうかね。
会議代時給3千円、その他諸経費はほとんど相手持ちということを考えるといいように感じますね。
期間も夏まで(大体1~2ヶ月くらいでしょうか)ということも踏まえると、条件はかなりいいのではないかと勝手に想像してしまいました。
内容が内容だけになんとも言えませんが。
改めて見返すと、1話の時点での伏線の数がすごいですね。
ゆにまる。の動きとか言葉、紺野さんに抱いていた印象まで。
全体を通して読んでから改めて読むとすごいなと思いました。
このあたり、原作が小説ということもあるのかなと思いました。
このとき、紺野さんのが何考えているのか本当にわからないんですよね。
死ぬ理由もわからないし、わざわざ遺書を読んで欲しいのもわからない。
こういうのも「異世界」ということでしょうかね。
近づく距離
遺書を書くにあたり、原稿を考えるため会議をしていく2人。
しかし、それは「会議」という名の遊びになっていました。
死装束の買い物、遺書の書き方からカラオケ、水族館などなど、紺野さんはあちこちに行っては楽しんでいました。
ゆにまる。が『本当に死ぬのか?』と思ったほどです。
その中でも水族館のときの2人の「意地」について話し合う場面はとても印象に残っています。
ゆにまる。の「異世界に行きたくない」という意地は、私自身も感じたことがあることだったので共感していました。
言い換えると、「普通になりたくない」ということかなと思います。
世間的に「普通」と言われるようなことに染まりたくない=自分じゃなくてもいいということが嫌なのかと思います。
それに対する紺野さんの反応も『意地で死ぬというものでした。』
それは、ゆにまる。が感じていた「普通」がくだらないということを肯定していました。
紺野さん自身、ゆにまる。がいう「異世界」の代表のような人です。
そんな人がゆにまる。の言葉を肯定し、『意地で死ぬ』といったことには、それとなく感じつ描写はあったとはいえ、私も衝撃を受けました。
この時、2人は「似たもの同士」なんじゃないかと思いました。
どちらも「普通」と呼ばれることに対して「くだらない」ということを考えています。
ただ、その向かう方向性が「生きる」か「死ぬ」かの、どちらかに向いたことなんだと思います。
このことをきっかけにゆにまる。は紺野さんのことをもっと知りたいと思うようになります。
この先のことを考えると、ゆにまる。との距離が近づくことまで紺野さんの予定通りだったのかと思いました。
途中まで全くと言っていいほど紺野さんの心情がわからないので、実際どこまで考えているのかわかりません。
ただ、このときの水族館の会話は本音を話していたと思いたいです。
おわりに
ということで、「夏とレモンとオーバーレイ」の紹介、感想でした。
なんだかいつも以上に取りとめない文章になってしまい、申し訳ないです。
それくらい、言葉に表せないような感情がいだきました。
印象に残った場面
- 依頼を受けて訝しむゆにまる。(第1話)
- 紺野さんに首を書く癖を知られていたゆにまる。(第4話)
- ゆにまる。の生き方をかっこいいと言った紺野さん(第4話)
1番目は『葬式で遺書を読んで欲しい』と言われたときのゆにまる。です。
感想でもかいていましたが、仕事の依頼とはいえ、初対面の人にこんなことをお願いするなんて頭がおかしいと思います。
このときのゆにまる。の紺野さんの評価は『インスタ女』ともう一つ出ていました。
『雑誌切り抜き量産型きれいめアラサー大人女子のくせに』
『夏とレモンとオーバーレイ』より引用
これ、最終的にほぼ完璧に当たっているんですよね。
最初の時点である意味本質を掴んでいたんだなと思いました。
それ以上に紺野さんの思考回路が突飛すぎて読めなかったのですが。
2番目は紺野さんからネックレスをプレゼントされたときです。
首の後ろをかくという癖について、本人は気を紛らすためと言っています。
この癖がある人というのは、羞恥心があるなどのネガティブな気持ちのときに現れがちです。
ゆにまる。自身、「最底辺」と言っているので、他の人への劣等感とかあるんだろうなということを感じました。
私自身、同じような癖があるので、ゆにまる。の感情がとても理解できました。
最後は感想のときにも書いた、ゆにまる。が意地について話したときの紺野さんの反応です。
この直前に普通の行き方を「くだらない」と言っており、それに対して、ゆにまる。に質問したときの答えが意地でした。
自分に今までできなかった生き方をしているゆにまる。のことを本気で尊敬したんだと言うことが後のことから感じました。
ここまで感じた後のカバー裏の短編読むとより紺野さんの気持ちを理解できるように感じました。
今回、最後の落ちまでは書きませんでしたが、最後まで心に響く物語でした。
人生、社会への不満、その他色々な感情…。
いろんなことを考えさせられるような1冊でした。
ぜひ読んでみてください。
それではまた次の作品で。
あとがき
改めて感想についてかくということの難しさを実感した作品でした。
元々、だんだんと感想を書き続けるということにキツさを感じてきていた中、この本の感想を書き始めて更に難しいと思いました。
人に「読みたい」と思うような感想をかくのは難しいですね。
書きすぎても「じゃあいいや」となりますし、書かなすぎても興味を持ってもらえないですし。
基本的に流れに沿って書いてそこに自分の感想をかくようにしていますが、それじゃあらすじ紹介だけになっているような気もしてきました。
でも、自分がどんな本を読んできたのか、その本について色んな人に知ってもらいたいという気持ちは当然ありますので、もっと「私らしい」紹介をしていきたいと思いました。
ある意味、これも「意地」なのかもしれませんね。
今回はイラストというイラストがなかったので、ここまでにします。
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