はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は、伏見七尾先生著、おしおしお先生画の「獄門撫子此処ニ在リ」です。
ライトノベルは久しぶりな気がしますね。
第17回小学館ライトノベル大賞でもあります。
化物を喰らう「獄門家」の無椰師(作中の霊能力者の総称)、『獄門撫子』(撫子)と、自称、「普通の人」こと『無花果アマナ』(アマナ)。
とあるきっかけで出会った2人が、それぞれの目的のために怪異と対峙していく物語です。
こういう怪異譚のような物語はグロテスクなのもセットのイメージがありますが、ガッツリ描写されているのは少ない感じがしました。
それでも元ネタが「鬼」や「怪異」が関わっているだけあってそれなりに描写はありますが。
お互い利用するつもりで協力してきたつもりが、段々と相手のことを気にかけるようになるというのは、よくある展開ですがその関係性がいいなと思いました。
その内容も物語の伏線から色々と計算されたように感じて巧いなと感じました。
禍々しくも美しい、そんな物語でした。
オススメポイント
- 撫子とアマナの関係
- 食べ物に目がない撫子
- 怪異との戦い
作品名 | 獄門撫子此処ニ在リ |
作者 | 伏見七尾 |
イラスト | おしおしお |
発売日 | 2023年8月18日 |
定価 | 891円(税込) |
発行 | 株式会社小学館(ガガガ文庫) |
あらすじ
無椰師、化物双方から恐れられる「獄門家」であり化物を喰らう娘、獄門撫子。
彼女はとある依頼をきっかけに彼女のことを恐れない自称「普通の人」である胡乱な女性、無花果アマナと出会う。
それをきっかけに化物退治の協力関係を取っていく。
次々と化物退治をしていく中で、お互いのことを知っていく。
そして自分の過去とも向き合っていくことになる。
鬼と人の出会いがもたらすものは。
美しくもおぞましい、少女鬼譚。
感想
撫子とアマナの関係
個人的に人間関係とか、繋がりと言ったものを見るのが好きです。
友情、恋愛、その他…
そういった人同士の繋がりに萌えます。
それを踏まえて、撫子とアマナの関係はとても好きです。
打算的に付き合っていたはずの2人がいつの間にか気になる存在となっている。
そういう関係性がとても好きなのでとても良かったです。
この2人の関係で特に好きだった場面が、三からです。
『ー君と会えなくなるじゃないかッ!』
中略
『怪異を探すことをやめたら……君と会えなくなるだろう。それは、なんというか……』
中略
『イヤ、だと思う……だから、その……』
『獄門撫子此処ニ在リ』より引用
この場面が特に最高でしたね。
言葉を発したアマナ自身はこの言葉を「嘘」と言っていますが、それが本心かどうかわからなくなっていました。
この時点でも事件をいくつか解決していて、撫子個人の事情もある程度知っていたので、すでに情が湧いていたのかなと思いました。
そんな自分の心に戸惑う一方、初めて自分への好意の言葉を聞いた撫子の喜び方が可愛かったです。
笑い声は怖かったですが…
「友人」と呼べるような人が一人もいない状態で、こんな告白じみた言葉を言われたら誰でも嬉しいよなあと感じました。
それまでも、アマナに対して他の人以上の感情を出しているようでしたが、ここで鬼としての「執着の対象」になったのかとも思いました。
それがラストまで繋がってきたのかなと思いました。
食べ物に目がない撫子
この作品、グロテスクな描写もそこそこにある一方、食べ物(主に食事)に関する場面も多いです。
撫子自身が食べることが好きで食事の場面が多いというのが理由ですね。
一応補足すると、撫子自身鬼に近いことから、普通の食事だけでは満足できず、鬼などの怪異の肉を食べないと空腹が満たせないという体質です。
人の肉でも満たせるそうですが、「人の肉は喰べない」と心に決めています。
そのため、怪異の肉が切れると空腹に襲われていて、普段の食事の量も多いです。
にしても、食べ物につられているような気がしなくもありませんが。
アマナからの呼び出しも点心だったり、鰻に反応したり、ちょこちょことした反応が可愛いです。
個人的に好きなのが四叔父の『獄門桐比等』との掛け合いです。
グジ(アカアマダイ)を買ってきた撫子が桐比等に料理を作ってもらおうと桐比等に対して自分が言った料理ができないと嘘つき呼びしたところが面白かったです。
嘘が嫌いな桐比等は嘘つき呼びされたことに怒り、撫子に料理を振る舞うことになります。
この一連流は家族みたいな感じがして面白かったです。
口では撫子に対して色々と言っている桐比等ですが、その行動の端々に撫子を思いやる行動が見えています。
アマナの前に顔を出したのも撫子と絡んでいる相手がどんな人物か見極めるためでしょうし、たまに撫子の住んでいるところに顔を出しています。
そしてたまに料理を「作りすぎた」と持ってくる。
もうこれツンデレとかそういう類の行動じゃないですか。
そう考えると桐比等のことが好きになります。
まあ、ツンデレにしてはツンが9.5割、デレ0.5割とほとんどデレが無いぐらいですが。
なんだかんだお互いのことを見ている2人の関係性も好きです。
怪異との戦い
最後はメインでもあり、外せないバトルです。
この作品はいわゆる「俺ツエー系」ではないです。
というかほぼ毎回苦戦しています。
作中で恐れられている「獄門家」の撫子ですが、一方的に勝てた戦いというのは殆ど無いです。
基本は、アマナとともに相手の正体を探る→そのメタを張る→撫子がトドメを指すみたいな流れです。
それでも最後はゴリ押ししているようなときもありました。
しかも止めに行くまでの間は結構やられている場面が多い印象でした。
元々こういう怪異譚みたいな作品の戦いが相性勝負というか、メタ張って勝つみたいなところがあるので、本作も同じような感じなのかなと思いました。
個人的にはこういう相性ゲーみたいな戦いが好きなので、敵味方ともに色々と策を張り巡らせているところも良かったです。
撫子の派手な戦い方も、文字だけでも迫力を感じられたので良かったです。
「俺ツエー」みたいな作品も好きですが、苦戦して、対策して勝つというのはバトルでの緊張感なども感じられました。
おわりに
ということで、「獄門撫子此処ニ在リ」の感想でした。
久しぶりに戦闘描写重めの作品を見たような気がしますが、ダークな作品はいいなと改めて思いました。
この巻で完結しているような感じですが、次も出てくれないかなと期待しています。
もっと撫子とアマナの関係も見たいですし、桐比等が戦っている描写がなかったので、その姿も見てみたいです。
あとがき
最近ライトノベルを読む時間が減ってしまっています。
漫画は短い時間で読めるのでさって買って読めるのですがライトノベルは時間が掛かる分じっくり読みたいと思ってためてしまいます。
もっと早く読めるように頑張りたいです。
さて、今回の好きなイラストですが、三より、稲荷寿司を食べる撫子です。
暗めだったり、不穏さを感じる今作の挿絵の中では平和な挿絵です。
口いっぱいに稲荷寿司を頬ばっている撫子が満足げな顔していて可愛かったです。
余談ですけどアマナが通っている大学の稲荷寿司なんですけどちょっと大きすぎませんかね…
いくらいいとことの大学の高めの料理だからってあまりない大きさな気が…
まあ、撫子にとってはこれくらいの大きさがあったほうが良かったんでしょうが。
基本的に思い展開が多い作品だったので、この場面はほっこりできたので良かったです。
もし次巻があったら、もっとこうしたイラストも増えたらいいなと思います。
それではまた次の作品で。
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