はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介するのは、苗川采先生の「私を喰べたい、ひとでなし」4巻です。
比名子の思いが少しずつ変わっていき、汐莉さんの関係が変わろうとするといった話の転換点となる巻になっています。
特に比名子の心の変化がよく見える巻になっています。結構今回感情が現れている場面が多いような気がします。
汐莉と美胡の掛け合いはもう漫才の領域に達している気がしますね。見てて面白い。
段々と重くなっていきそうな雰囲気の中でこの2人の会話が本当に癒やしです。
お願いだからこの雰囲気で進んでほしい…難しいでしょうね。
作品名 | 私を喰べたい、ひとでなし |
作者 | 苗川采 |
発行日 | 2022年5月27日 |
定価 | 737円(税込) |
発行 | 電撃コミックスNEXT(㈱KADOKAWA) |
あらすじ
「…私たちは、友達にはなれないの?」
希死念慮に囚われ、明日に希望を見出だせない比名子だったが、自分を守り、受け入れてくれる人喰いの人魚、汐莉に対し、捕食者と被捕食者を超えた感情を抱き始める。
友人としての2人の新たな関係を望む比名子に対し、汐莉が告げたのは、拒絶の一言だった。
「残念ですが、それは永遠にあり得ません」
(「私を喰べたい、ひとでなし」4巻 あらすじより引用)
感想
比名子の汐莉に対する思いの変化
今巻の大きなポイントは比名子の汐莉に対する思いだと思っています。
これまでの比名子は、汐莉に対して自分を喰べてくれるということから自分を救ってくれる対象と思っていると考えています。
しかし、前回美胡が妖怪だったこと、前回から今回の海水浴で汐莉が比名子にかけた言葉によって、友達になれないかと思うようになっています。
このあと直接聞かれたときは『美胡ちゃんみたいに友達になれるような優しいひとじゃー…』と否定していますが、このときには今とは別の関係になれる可能性を考えていたんじゃないかなと思います。
それくらいこのときの汐莉が優しかったと思います。
比名子の腕の傷を見たときも「比名子が比名子であるということ それだけが私にとって一番大切なこと」と言ったり、十分に楽しませることができなかったお詫びとしてストールをプレゼントするなど、比名子のことを大切にしている場面がみえます。
なんだかんだ過保護な感じもしてきます。本当に喰べようと思っているのかわからなくなりますね。
こうした新しい関係を考えていたから、『また連れてきてくれる?』という未来に向けた言葉が出たのかなと思っています。このまま前向きに生きる希望を持ってほしい。
ただ、汐莉がそれを許しません。汐莉は全て自分のためにしていることであって、友達になれないかという問いに対して、『それは永遠にあり得ません』話しています。
この辺の意図についてはわかりかねるところではありますが、汐莉にとって比名子は友達になれる存在ではないということなのかと思います。(逆かもしれませんが)
それを受けてショックを受ける比名子ですが、汐莉はそれを「人間らしい顔が出来るようになりましたね」と話しています。
それだけ、比名子の汐莉に対する思いが強くなってきているのだと思います。
この後襲われたときも、それまで自分を殺してくれるような存在であればある意味なんでもよかった比名子が、汐莉を思い出して襲われたときも殺されないように行動を取っていることからも感じることができます。
この2人の関係がもっと良くなればいいと思うばかりですね。
美胡と汐莉
今回は美胡と汐莉の絡みが多いです。喧嘩するほど仲がいいと思うほどです。(確実に美胡は汐莉のこと本気で嫌いですが。)
比名子にバスケ部の合宿の手伝いを頼んでいるときに現れた汐莉に対して、「うわっ…出たよ」といった場面は勢いも相まって面白かったです。本当に汐莉のことが嫌いなんだなと感じます。
それも比名子の事が心配だからというのも大きいでしょうね。汐莉は比名子の願いを叶えようとしています。美胡は比名子には生きていてほしい。だからこそ比名子の願いを叶えようとしている汐莉のことが嫌いなんでしょう。
美胡も比名子の思いについて察しているので、なおのことでしょうね。
にしては嫉妬とかそういった感情も大きい気がしますが。合宿も3人だったらいいという比名子の言葉に対して汐莉と何かあったのかと問い詰めたり、比名子からもらったプレゼントを汐莉に自慢したりと距離を置くと言うよりはぐいぐいいっています。
この2人の漫才(?)があるので話が重くなり過ぎなくなっているのでいいですね。
それでも美胡は「比名子を助ける」という点では汐莉のことを一応信じているように感じます。
比名子が襲われた時、美胡は助けに行こうとしますが、他の生徒がいるので危険に巻き込んでしまう可能性がありました。
そのとき汐莉は『比名子以外の面倒を見る気はありませんよ』と言っています。逆に比名子のことは守ると言っています。そのため美胡は他の生徒が巻き込まれないようにするために比名子を汐莉に任せます。
本当は自分が行きたいと思っていてもその土地の人たち皆を守りたいと思っている美胡にとって、他の人の安全も確保するとなると苦渋の決断だったと思います。
それが伝わる苦肉の枕投げ…こんな楽しめない枕投げ嫌ですね。
仲がいいというわけではありませんが、「比名子を守る」という一点のみで協力するこの関係性もいいですね。
終わりに
ということで「わたたべ」4巻の感想、紹介となります。
他にもこの巻からの新キャラ、あやめのこととか色々と本編について触れたいことがあるのですが、このへんは実際に見ていただきたいという思いもあることから割愛させていただきます。
あやめも色んな意味でいいキャラしているので好きなキャラですね。
今回も妖怪でしたり、それに関連したもの「人と妖怪の中間の手など」出てきますが、そういったものデザインには忖度がないというのがこの作品の魅力の一つだと思っています。
前回の美胡はどちらかというと土地神なのでかっこいいとか凛々しい方面によっていると思っています。
比べて今回はホラー寄りの怖さがありますね。気持ち悪さとかも妥協せず描かれているように感じます。そこがいいのですが。
ちなみに海から見える手については苗川先生の手を参考にしているとのことです。リアル…
今回の私の個人的推しポイントとしては
- 少しずつ前向きな考えをしている比名子
- 汐莉と美胡の漫才(言い合い)
だと思います。今巻は特に汐莉と美胡の掛け合い多めなので面白いです。やっぱりお気に入りのシーンは「うわっ…出たよ…」ですね。言い方も合わせて面白いです。
ニコニコ静画でも分割で最新話が更新されています。
先が気になる方はこちらを見てもいいかもしれません。こちら6巻以降の話なっています。(2023年5月現在)もっと内容が重くなっているのでおすすめです。
それではまた次の作品で。
あとがき
初期設定案が面白すぎました。
比名子も汐莉も「お前だれだ⁉」状態でしたね。むしろ今の重さ的にこれくらい明るく振り切れてもええんやでと思いますが。
汐莉の初期設定がだいぶ幼かったですね。私は今のデザインが好きです。(まあ体を自由にいじれるから外見についてはあまり意味ありませんが。)
知能が今の8分の1程度しかなかったんですね。ほんと今の内容と違いすぎてギャップで風邪ひきそうです。
そして低い知能やゆるゆるといった初期の比名子と汐莉から抜けていって全て美胡に引き継がれていると思うと本当に美胡は癒やし枠なんだなっと思います。
ちなみにこの巻の最後の18話ですが話が重たいです。落差が激しすぎる。
これくらいしないと心が癒えないのでしょうか。
こうしたボツ案とかの話しを聞くのは好きなのでこの巻に載ってて面白かったです。
こういうのも単行本の楽しみですね。
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