
はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は、いくたはな先生の「フツーの恋って何?」上巻です。
3人の少女による三角関係が描かれた作品です。
この作品、個人の名前が出てこなかったので驚きました。
こういう作品で、名前が出てこないというのは珍しいなと思いました。
百合系の作品で、同性同士であることを意識しているものもありますが、この作品は同性が好きであることを「普通」ではないと強調していましたね。
最近、そういうこと対して、敏感な世の中ということもあって、切り込んだなと思いました。
それもあってか、「普通」とはなにか、ということについて考えさせられる作品だと思いました。
本作は漫画ですが、文学にも感じる感情の描写が多かったように感じました。
そんな複雑な「恋心」を取り扱っているこの作品。
色々なことを考えさせられる作品になっていると思います。
個人的に好きなポイント
- 同じ場面でも変わる視点
- 相手に対する感情の重さ
- 普通の恋とはなにか
作品名 | フツーの恋って何? 上 |
作者 | いくたはな |
発売日 | 2023年11月8日 |
定価 | 825円(税込) |
発行 | 株式会社トゥーヴァージンズ |
あらすじ
高校の入学式、お互い一目惚れをした2人の少女。
彼女たちは同じ趣味をきっかけですぐ仲良くなる。
しかし、同性同士であることから、お互い好きな気持ちを伝えることができなかった。
ある日をきっかけに幼馴染が入ってきたことで三角関係となる。
「フツーではない恋」の結末は…。
感想
同じ場面でも変わる視点
この作品は、主要人物の3人の視点で進んでいきます。
ある場面についてそれぞれの視点で話が進んでいくのは、話の進みが遅くなるように感じますが、個人的にはテンポよく進んでいてよかったです。
こうした表現から、小説のような雰囲気を感じました。
その分、両片想いの辛さがダイレクトに伝わってきて心がしんどくなることも多かったですね。
個人的には、2人で同性の恋愛について話しているときに、お互いどういう気持ちでその発言をしたのかということがすぐに読者に伝わって胸が苦しくなります。
読者の目線だと、お互いの気持ちを知っているので、「それを直接言えば全て丸く収まるのに」と思ってしまいます。
現実でもそうですが、自分が普通ではないと思うからこそ、素直な気持ちがすぐに出せなくなると思います。
それを言ったら今の関係が崩れてしまうと思うと、今のままがいいと思ってしまうのは仕方ないことでしょう。
そういうことも思ってしまうからこそ、好きなのにすれ違っていく2人を見ていくのはとても辛かったです。
相手に対する感情の重さ
この作品の主要3人は、それぞれの相手に恋心を抱いています。
その恋心は結構重たいです。
それはヤンデレのような「自分だけを見て欲しい」というより、「この気持ちをどうにかしないといけない」というような感じです。
好きだけど、それは「フツー」じゃないから、言葉にしないようにと押し込めています。
わざわざ心のなかで、言葉にして、思いを止めようとしているのは、それだけ相手のことを思っているからだと思います。
個人的に一番重たい感情を懐いているのは幼馴染の子ですね。
2話の目での牽制の仕方が怖かったです。
この作品は、表情もそうですが、目の表現が感情を特に表しているように思います。
普通のセリフでも、目が暗くなっていたりしていて、そういうところは、漫画ならではの表現だと感じました。
これらが相まって、一つ一つの言動に重さがより感じられました。
フツーの恋とはなにか
この作品のタイトルであり、主題でもある「普通の恋」についても、色々と考えさせられました。
作中では、同性での恋愛は増えてきているものの、まだ一般的でない状況でした。
なので、自分の好きな相手が同性であることで、お互い一歩踏み出せないでいます。
個人的な考えとして、「普通」というのは、自分が生きてきた中で当たり前のことだと思います。
国や住んでいる地域が違えば、その人それぞれの普通は異なってきます。
なので、「普通」は人の数だけあると思っています。
それをなるべく標準化しているのが、常識や世間、マナーといったものだと思います。
主人公たちは、こうした「一般的な考え」として、同性との恋愛は「普通ではない」ものと思ってしまっているからこそ、このような状態になっていると思います。
まあ、高校生ぐらいまでは「学校の中」がいわゆる「世間」になりますので、その中で他の人と違う考え方をするというのは生きるのは難しいです。
そうなると、少数はであろう同性との恋というのは普通じゃないから、人にも相手にも言えないということになると思います。
『フツーの恋って何?』
『フツーの恋って何?』上巻より引用
作中でも言われたこのセリフは、自分がまわりとズレていると思っているからこそでてしまったセリフと考えると、とても重く感じます。
「普通」であることが絶対正しいということは無いと思いますが、「普通」であることがいいと思われるこの世の中。
この作品を通して、「普通」について改めて色々と考えるきっかけになったなと思いました。
感想
ということで、「フツーの恋って何?」上巻の紹介・感想でした。
いつもより文学的に感じたことから、作品を通して、色々と考えることが多かったです。
そのせいで余計なことまで書いてしまった気もしますが…。
上巻では、ラストに実質特大の爆弾が落ちたところで終わっています。
ここから3人の関係がどうなるのか、それぞれの恋がどうなるのか、とても気になります。
また、個人的にはこの作品での「普通の恋」についての結論がどこに行き着くのかというのも気になります。
下巻がどうなるのかまだわからないということなので楽しみにしたいです。
あとがき
「駒田蒸留所へようこそ」を最近見に行きました。
P.A.WORKSのお仕事シリーズということで最初から期待値は高かったですが、とても良かったです。
話も綺麗にまとまっていて、ウイスキーを通した家族の絆もとても良かったです。
私はあまりウイスキーを飲まないのですが、作品を見てからウイスキーを飲んでみようかな思うようになりました。
今度挑戦したいと思います。
いつもイラストの紹介をしていますが、今巻はカラーページのみだったので紹介します。
3人が笑い合っているイラストになります。
これどこの世界線でしょうかね…。
本編見たあとだともはや別世界のように感じます。
まあ、左右の2人は1人しか見ていないので、たまたま一緒にいるだけともとれますけど…。
下巻でこの関係性になるか、見届けたいです。
それではまた次の作品で。
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