
はじめに
こんにちは、トビです。
今回紹介する作品は、羽流木はない先生原作、篠月しのぶ先生漫画の「フツーと化け物」1巻です。
たまたまX(旧Twitter)で流てきたのを見て面白そうと思い、流れで購入した作品です。
人間関係が苦手で「普通」になりたい女子高生『伊藤さん』が「普通」の女子校生を演じている化け物『高橋さん』から「普通」を学ぶという物語です。
「普通」の定義についても話されてていて、感心することも多かったです。
またそれを話しているのが普通の人ではない化け物というが皮肉というか、外から見ているからわかるのものなのか。
絵柄に惹かれましたが、色々と考えせられました。
これからの展開がどうなっていくのか、すごく楽しみな作品です。
あと基本かわいいのにちょいちょい表情が怖くなるのになんか惹かれます。
作品名 | フツーと化け物 1 |
作者 | 原作 羽流木はない 漫画 篠月しのぶ |
発行日 | 2023年9月12日 |
定価 | 792円 |
発行 | 株式会社KADOKAWA(BEAMCOMIX) |
あらすじ
人間関係が苦手で人とうまく付き合えない女子高生の伊藤さん。
そんな彼女は普通になりたいと思っていた。
そんな伊藤さんが憧れていた「普通の人」高橋さん。
控えめで優しく、目立たないと思っていた彼女の正体は人を丸呑みできる「化け物」だった。
「化け物」であるにも関わらず、人間として普通に過ごしている高橋さんに憧れた伊藤さんは、彼女に普通を教わりたいとお願いする。
伊藤さんの話を聞き、普通を教える高橋さん。
しかし、彼女には別の目的があり…。
普通になりたい少女と人間になりきっている化け物。
普通について考えるオトメ暴走譚。
感想
普通「じゃない」少女の伊藤さん
本作の主人公であり、普通に憧れる伊藤さん。
人との距離感が分からず、他の人からも「人間の真似をしているよう」と言われてしまうほどです。
なんか、ここまで距離感が不安定というか、挙動不審だともうそういう病気ではないかとも疑ってしまいます。
人間関係でトラブルがあったとか、人との付き合いがそもそも嫌とか、そういう理由がないと、人間関係でここまでこじれないと思うんですよね。
話を読んでいると、他の人の機微に鋭かったり、直感的にその人の本質を言い当てているような描写が見えるので、人の気持ちがわからないとかそういうものでもなさそうです。
むしろ、素直というか、純粋の部類に入るような気がします。
まあ、相手を考えず自分の意見をぶつけたり、アドバイスを貰っても自分の意志を通そうとするところはコミュ力の低さを感じますが。
また、気になるのは、高橋さんの正体をを知って近づこうとした点です。
これには高橋さんも『変わっている』といっていたぐらいでした。
人が死んだところを見てもあまりショックを受けていない(苦手な人だったというのもあると思いますが)、自分を傷つけることに躊躇がない。
ちょっとメンタルが合金すぎ、キマりすぎではないでしょうか。
もうこれ子どものときになにかあったレベルじゃないと、ここまでのメンタルにならないと思いますが。
この先とかで「普通に憧れた理由」などもう少し詳しく知りたいなと思います。
まあ、ここまで言っている時点で私自身も彼女のことを「普通じゃない」といっていることと同義なのですが。
人に紛れる「化け物」高橋さん
そんな伊藤さんが「普通」を学ぶ相手に選んだのが「化け物」である高橋さん。
人の皮を被り、人間生活に馴染むタイプの化け物です。
作中では「気ぐるみタイプ」とも言われていました。
いろんなフィクションでも、こういうタイプはいますね。
ただ、人に擬態する苦労みたいな話があったのは面白かったです。
運動部などの「タグ付け」とか体臭などの「匂い」の話は、擬態の話ながら感心していました。
途中、ドラッグストアの話が出てきて、『人間の生活の悩みをありのまま知れる場所』と表現していて、なんか妙に納得してしまいました。
匂い消しのボディーシートとかシャンプー、その季節にあった商品など個人の悩みを解決するもの。
次ドラッグストア行くときはもっと商品のことについても見てみたいと思いました。
そんな風にある意味ストイックと言えるほど人間に擬態している高橋さん。
ちらっと本編でも出ていましたが、ここまでこだわっているのは何か理由がありそうです。
人間社会に入りたいと思うようなことが昔あったようなことが出ています。
そのあたりが今後どう伊藤さんとの関係に繋がっていくか楽しみです。
ちなみに、ちょいちょい『その時は若かった』や『一番昔の記憶』とか言っていたので、高橋さん、結構な年月を生きていると思われます。
つまり、実際は…これ以上はやめときましょう。
「普通」とは?
さて、何度も繰り返していますが、この作品は「普通」をテーマにしています。
では、「普通」とは何でしょうか。
世間的な普通、都市や地方などの地域的な普通、学校、職場などの限られた場所における普通。
それぞれの場所でそれぞれの「普通」があります。
例えば、精霊流しの爆竹など、長崎県では普通のことでも、東京や大阪では普通ではないです。
また、平成では普通のことでも令和では違っているなど、その時時によって「普通」は変化していきます。
この作品で、「普通」について一つの答えが出されています。
ネタバレになりますが、それは『他人の邪魔にならない』ということです。
不文律によって社会を回す。
普通かどうかは自分ではなく、自分と出会った誰かが決める。
なんだかすごくストンと中に入ってきました。
いわゆる「空気を読む」ということなんでしょうね。
周りの空気に合わせて考動することがその場にとっての普通であり、空気を乱すことは普通ではないこと。
人間関係のために普通になりたい伊藤さんにとって、これ以上刺さる言葉は無いのではないでしょうか。
改めて、「普通」について考えさせられたように感じました。
こういうの通して、自分の価値観と照らしあせてみても面白いかもしれませんね。
おわりに
ということで「フツーと化け物」1巻の紹介・感想でした。
あまりこういった感じの画の漫画は買わないタイプですが、すごく楽しめました。
個人的に好きな場面は
- 高橋さんを「希望」と思っている伊藤さん(第2話)
- 高橋さんに殺されないよう交渉する伊藤さん(第7話)
- 化け物に「化け物」と呼ばれる伊藤さん(第10話)
です。伊藤さんが印象強いですね。
1番目は1話の出来事を思い返している場面です。
内容としては読者へのあらすじ説明を兼ねていますが、このあたりからでも「普通じゃない」伊藤さんが伝わってきます。
なんだか、高橋さんが演じる「人間」に憧れているというより、高橋さんという「化け物」に憧れているようにも感じます。
考えすぎでしょうかね。
2番目は高橋さんに再び命を狙われたときの場面です。
殺されそうになったときに、自分を落ちていた鉄片で腕を切ったり、首を切って死ぬことで入れ替わりができないようにしようとします。
伊藤さんの洞察力と判断の速さが印象に残ります。
というか、最初思いっきりリストカットような切り方してますが、その後大丈夫だったんでしょうか。
あまりにも思い切りが良すぎる。
自分が嫌いなせいか、自分に対する執着が無いように感じます。
その辺の危うさも今後見えてくるんでしょうかね。
3番めは、高橋さんとは別の化け物と退治したときにその化け物からいわれた場面です。
普通になりたい「人間」の伊藤さんにとって最大の皮肉です。
この作品、化け物は人間社会に紛れ込んでいます(そんな出てきているわけではないですが)
それだけ、人間社会に馴染むように「普通」を学びます。
そんななか、人間社会を生きづらい伊藤さんは、化け物からしたら、「普通」じゃない化け物なんでしょうね。
この漫画を表しているかのような場面ですごく惹かれました。
ここからさらにおもしろくなりそうで、これからも楽しみです。
あとがき
私自身、自分は普通じゃないだろうなと思ってしまっているので、「普通」がわからないということになんだか共感してしまいました。
この作品を読んでいると、まだ私は「人間」だなと変な安心をしてしまいます。
さて、今回印象に残ったイラストですが、第7話のイラストです。
この先行き止まりの方向入っていくような伊藤さんです。
うつむいて見えていないからというのもありますが、まるで「人間」が入ってはいけない「化け物」側に入っていくようにも感じます。
この作品のイラストは、パッと見のイラストの印象がすごく印象的で惹かれます。
何かしらのメッセージ性も感じられるので、どんなことをイメージしているか考えたくなります。
あと個人的には本の手触りがとても良かったので、紙で買いたい人がいたら、手触りも楽しんでみてはいかがでしょうか。
それではまた次の作品で。
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